竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主です。藤沢周平が好きです。

今年も最強ー高尾山天狗トレイル2018予報

1月14日開催の高尾山天狗トレイル2018が、私のレース初めとなります。
昨年のレース初めもこの高尾山天狗トレイルでしたが、天気予報がこのままならば、今年も昨年同様、最強寒波の中のレースとなります。

昨年は高尾陣馬主稜線の一部が凍土状態になっていたり、霜柱でザクザクになっていたりしました。
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そして、スタート直後とフィニッシュ直前に通る日影沢林道は、午後になっても結氷していました。
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今年もこうした凍結によるリスクがある可能性は高いと思います。
ただ、昨年私は凍結に関係のない場所でこけて、左膝関節が内出血で腫れる大ケガをしました。
当たり前のことですが、全コースにわたって注意します。
今年もこけ初めにしてしまうのは、是が非でも避けたいと思います。

なお、会場の日影沢キャンプ場は、スタート前は少し日が当たりますが、午後になると文字通りの日影となります。
最強寒波の日影沢、けっこうな地獄でしたよ。
最強の防寒をおすすめします。


*昨年のレポート
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/01/16/234447
*装備等の備忘録
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/01/17/214348

ゆく靴くる靴2017ー2018年新春小ネタ

年も明ければ月も明けたので、通信制限との闘いも一段落しました。
今年も変わらず、私の過剰なものを放出していきたいと思います。
何とぞよろしくお願いいたします。

本来は大晦日にやるのがタイミングとして適切なのには目をつぶってくだされば幸いなのですが、今回の帰省で、実家に置いていた古い靴にお別れしたのと、新たに実家送りとなった靴について、思い入れを少々書き連ねたいと思います。
私は千葉県出身で東京在住ですが、両親が京都市に住んでいます。
京都の実家近くにはトレイルランニングに適した山が多く、帰省の度に山に遊びに出掛けています。
昨日は愛宕山を中心に初詣トレラン山行をしてきましたが、これはもう4,5年続けている恒例行事となっています。
ロードも時間のあるときには走っているため、実家にはどちらのシューズも置きっぱなしにしています。
今回はどちらのシューズも履くのが危険なくらいぼろぼろになってしまったため、両方ともお別れをしました。

まずはロードのランニングシューズ、プーマのフウジンFUUJINです。
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たぶん2012年に購入したと思いますが、私にとってはなかなかよいシューズで、かなり気に入っていました。
足指の辺りのスペースが広く取ってあり、履き心地が快適でした。
スピードに乗りやすい靴でもあり、私の10kmのベストタイムはこの靴で出しました(38分10秒)。
初マラソンもこれで走った、思い出深い靴です。
実家送りにした理由はアウトソールの磨耗が進んでしまったことと、足入れ部分の剥がれです。
実家でも使ってはいましたが、ついに使用に耐えられない状況となり、廃棄することにしました。
このフウジンは私としてはよい靴でしたが、世間の評価を得られなかったようで、おそらく廃盤となっているはずです。

次の廃棄シューズは、私の大好きなスポルティバのミュータントです。
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2015年のFTR100から履いていました。
私は足が大きく、気に入った靴があってもサイズがないということがよくあります。
日本で取り扱っていないサイズがピッタリ、なんてこともよくあるのですが、このミュータントはまさにそうしたサイズの靴でもあります。
このミュータントはWiggleという通販サイトで購入しましたが、UK11(US11.5, EU44.5)というイギリス向けのサイズの靴です。
ミュータントの場合はこのUK11が私にはピッタリで、サイジングという点では一番の靴です。
また、グリップのよさと足の保護性能の高さから、タフなレースには迷わずミュータント、というように、使い倒していました。
丈夫な靴でもあるはずなのですが、履き過ぎが原因のラグの磨耗や爪先の破損がひどくなり、実家送りとなりました。
実家で京都の山を走るにも安定してよい靴ではありましたが、特に爪先の破損が進行してしまったため、廃棄を決定しました。
ミュータントに関しては2代目を同様に履き倒しています。
これまで履いたトレランシューズでは一番好きな靴なので、廃盤にはなってほしくないです。
昨日、初詣でそう祈ってくればよかったかも。
*以下、私のミュータントへの偏愛の記録です。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/02/24/232932
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/07/15/002753

フウジンとミュータントには、2017年の大晦日の夜、実家マンションのごみ置き場にてお別れをしました。
余生を京都で送り、靴としての生涯を全うしたものだと思いたいです。
お世話になりました。
ありがとうございます。

その後をついで、新たに実家送りとなったのが以下の2点です。
まずはロードのシューズから、ランナーの皆様にはお馴染み、アシックスのターサージール(ワイド)です。
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5とか3とかではなく2ですらない、ターサージール、です。
たぶん2013年の亀岡元旦ロードレースの会場で手に入れたのだと思います。
この亀岡元旦ロードレースというのは、2014年元旦まで京都府亀岡市で開催されていた大会で、湯の花ロードレースという別名もありました。
現在は亀岡ハーフマラソンとして、開催日を12月に移して生まれ変わっています。
私は10kmの部に、2012年から3年連続3回出場しました。
その会場に出店していたランニング用品店がけっこう思いきった安売りをしていて、新作であるにもかかわらず4割引くらいで売っていました。
買わない理由は見当たらず、主にレースシューズとして履き倒していくことになります。
私のフルマラソンのベストタイムは、2015年の館山若潮マラソンの3時間25分10秒ですが、このターサージールワイドで記録しました。
最近はミッドソールが変形してしまったのか、足裏に妙な突き上げを感じるようになりました。
別の安売りの機会に入手したターサージール(レギュラー)と、つい最近手に入れたターサージール5(レギュラー)に後を託すこととして、購入の地である京都で余生を送らせることにしました。

トレイルシューズとしては、同じくアシックスのゲルフジアタック4を実家送りとしました。
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2015年の美ヶ原でデビューしました。
雨でコンディションの悪いなか、1度もこけることなくフィニッシュまで導いてくれたシューズですが、若干サイズが小さかったようで爪が何本か死んでしまいました。
ただ、サイズさえ合えばとてもよいシューズだと思いました。
アウトソールの放射状のパターンは、雪の結晶のような形をして、様式美すら私には感じられました。
以来、30kmくらいまでの短い距離のトレランや、ロードが多く混じるレースによく使うようになりました。
特に2017年は短いレースによく出場していたので、かなり重宝しました。
しかし、アッパーに破れが出たのと、アウトソールの磨耗でグリップが甘くなってきたため、お役御免にしました。
*ゲルフジアタック4についての記事ですが、ミュータントの偏愛記録でもあります。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/01/17/214348
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/04/11/230437

こうした靴だとか装備だとかの「物・モノ」について思いの丈を綴っていると、ある本にあった言葉をいつも思い出します。
精神科医の大平健氏による『豊かさの精神病理』(岩波新書、1990年)では、「モノ語り」という概念で、所有物を通してしか社会関係をつくることができない人びとについて考察していました。
私のモノ語りは私とモノとの関係でしかなく、そこに他人との関係性が入り込む余地のない、閉じられた語りです。
なので、大平氏の「モノ語り」の狙いからは外れているのですが、私のモノ語りにある種の効用を勝手に感じています。
一言で言えば、大切に使ったんだから仕方ないんだよ、と、私自身に物を捨てることを納得させるための物語なのだと思います。
たかが靴を捨てるのに何字書く必要があるんだ?
そう思う方がいると思いますが、私にはかなりの字数が必要なようです。
いっそ御経でも作っちゃおうかな。

さて、新しく京都組となったゲルフジアタック4は2018年元旦、愛宕山の初詣山行で早速再デビューしました。
愛宕山の山頂付近は雪と氷の世界でしたが、大過なく下山できました。
石を踏んだときのグリップが弱い感じは否めませんが、まだ走れそうです。
ターサージールにも、まだまだ走ってもらわなければなりません。
京都組のシューズ達は、代わりのない分、私のやる気次第では酷使されます。
その点はご覚悟の上、今後ともよろしくお願いいたします。

悪くはないー2017年振り返り

本当は年内に書き終えたかったcoast to coast 2017のレポートを中断して、2017年を振り返ります。
やはり月末は通信制限との闘いが厳しく、記事を書く速度が遅くなります。
この記事も写真がアップできない…。

Non c'e` male.
という言葉がイタリア語にあります。
悪くはない。
という意味の言葉で、ノン・チェ・マーレと発音します。
20年前に大学の第2外国語で履修したイタリア語の表現の中で、一番気に入っている表現かもしれません。
よいとは言えないけど、悪くはない。
かなり微妙な気持ちを、日本語以外でも表せることを知ったことが嬉しかったのだと思います。
ノン・チェ・マーレという発音にも、なにか悟った者のような響きを感じました。
これはたぶん、相手の質問に間髪いれずに応える言葉ではなく、一拍おいて発する言葉なのです。
その一拍は、相手の言葉を受け止めて、自分自身に問いかけるための時間です。
だから、悪くはない、とは会話の間に合わない言葉かもしれませんが、適切に選ばれて発せられる言葉であろうと、私は思います。

何が言いたいかというと、今年の私のトレイルランニング中心の山行を振り返ってみると、この言葉につきるということです。
悪くはない。

2017年は、初詣山行で猪と遭遇してパニクりかけた上にロストしかけるところから始まりました。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/01/19/234901
明日2018年の元旦も同じコースを行く予定ですが、猪にはできれば亥年まで大人しくしていてもらいたいものです。
その後、初レースの高尾山天狗トレイルで転倒して左膝を強打、膝関節から血腫を注射器で抜き出さなくてはならない大ケガをしました。
その後、3月の板橋Cityマラソン、4月の奥三河パワートレイル、5月の櫛形ウインドトレイルと、3ヶ月続けてDNF。
復帰できた6月の菅平スカイライントレイルは、前年よりも好タイムでフィニッシュできたものの、再びの転倒で右膝に故障を抱えました。
7月の美ヶ原トレイルランでは、完走できたものの、古傷のアキレス腱炎を再発させてしまいました。
山仲間の先生との山行も、この故障と台風の影響で、目的の権現岳~赤岳縦走が2度も流れました。
アキレス腱炎の影響は長引き、9月の千葉市海浜アクアスロン、信州戸隠トレイルランは抑え目のレースを余儀なくされました。
11月のFTRも、実は少しアキレス腱に不安がありましたが、不幸な事故で中止になってしまいました。
今年は獣のトラブルに始まり、負傷や故障に悩まされながら過ごした1年でした。

それでも、よかったこともそれなりにあったのです。
先日のcoast to coast 2017では、久々に暴走ともいえる快走をすることができ、少し自信を取り戻せました。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/12/17/181101
10月のハセツネのボランティア参加も、少しとはいえ、スタッフの視点でトレランを考えることができたのは今までにない経験でした。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/10/12/210413
そして、意外にも一番よかったことは、22年ぶりにアキレス腱の故障を再発させてしまった時に、過去の自分と向き合えたことでしょうか。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/07/23/001752
上の記事を書いたときは、歳をとって故障とうまく折り合いを付けられるようになっていたことに少し救われた気持ちになっていたのですが、最近は別の側面が気になっています。
それは、私が、当時自分で思っていた以上に苦しんでいたんだなということが、やっと今になってわかったんだなということです。
当時の倍以上の年齢になって、高2の自分がほぼ他人となった今にしてわかった痛みと苦しみでした。
アンジェラ・アキの「手紙~拝啓 十五の君へ~」とも似た状況なのかもしれません。
ただ、私には当時の自分のような誰かにエールを送ることよりも、痛みや苦しみが当事者の行動にどのような影響をあたえているのか、その当事者自体にはわからないのだということ、そのことが心に引っかかっています。
今年、色々な痛みや苦しみを抱えたトレラン関係者は数多くいると思います。
でも、たとえ20年以上かかっても、わかることがあるというのもよくわかりました。
わかれば、いつか何かできるかもしれません。
その希望だけは2018年に持ち越したいと思います。

一言に凝縮されると、悪くはない、ですが、そう言えるまではやはり、私は自分自身の記憶と記録を基に考えなくてはなりませんでした。
悪くはない。
軽い言葉に聞こえなくもないですが、その言葉に至るまでの経緯には、きっと過剰なものがあるはずです。
私は自分の過剰な自意識を鎮めるために記事を書いています。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/08/17/194217
来年も過剰なものを踏まえた上で、悪くはない、と言えるような1年になることを、この山で祈ってきたいと思います。
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京都市の最高峰、愛宕山の明日は晴れの予報です。
元旦から早起き、正直苦手です。
末筆ですが、皆さんがよい1年を、少なくとも悪くはない1年をお迎えになることを願っています。