竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主です。藤沢周平が好きです。

悪くはないー2017年振り返り

本当は年内に書き終えたかったcoast to coast 2017のレポートを中断して、2017年を振り返ります。
やはり月末は通信制限との闘いが厳しく、記事を書く速度が遅くなります。
この記事も写真がアップできない…。

Non c'e` male.
という言葉がイタリア語にあります。
悪くはない。
という意味の言葉で、ノン・チェ・マーレと発音します。
20年前に大学の第2外国語で履修したイタリア語の表現の中で、一番気に入っている表現かもしれません。
よいとは言えないけど、悪くはない。
かなり微妙な気持ちを、日本語以外でも表せることを知ったことが嬉しかったのだと思います。
ノン・チェ・マーレという発音にも、なにか悟った者のような響きを感じました。
これはたぶん、相手の質問に間髪いれずに応える言葉ではなく、一拍おいて発する言葉なのです。
その一拍は、相手の言葉を受け止めて、自分自身に問いかけるための時間です。
だから、悪くはない、とは会話の間に合わない言葉かもしれませんが、適切に選ばれて発せられる言葉であろうと、私は思います。

何が言いたいかというと、今年の私のトレイルランニング中心の山行を振り返ってみると、この言葉につきるということです。
悪くはない。

2017年は、初詣山行で猪と遭遇してパニクりかけた上にロストしかけるところから始まりました。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/01/19/234901
明日2018年の元旦も同じコースを行く予定ですが、猪にはできれば亥年まで大人しくしていてもらいたいものです。
その後、初レースの高尾山天狗トレイルで転倒して左膝を強打、膝関節から血腫を注射器で抜き出さなくてはならない大ケガをしました。
その後、3月の板橋Cityマラソン、4月の奥三河パワートレイル、5月の櫛形ウインドトレイルと、3ヶ月続けてDNF。
復帰できた6月の菅平スカイライントレイルは、前年よりも好タイムでフィニッシュできたものの、再びの転倒で右膝に故障を抱えました。
7月の美ヶ原トレイルランでは、完走できたものの、古傷のアキレス腱炎を再発させてしまいました。
山仲間の先生との山行も、この故障と台風の影響で、目的の権現岳~赤岳縦走が2度も流れました。
アキレス腱炎の影響は長引き、9月の千葉市海浜アクアスロン、信州戸隠トレイルランは抑え目のレースを余儀なくされました。
11月のFTRも、実は少しアキレス腱に不安がありましたが、不幸な事故で中止になってしまいました。
今年は獣のトラブルに始まり、負傷や故障に悩まされながら過ごした1年でした。

それでも、よかったこともそれなりにあったのです。
先日のcoast to coast 2017では、久々に暴走ともいえる快走をすることができ、少し自信を取り戻せました。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/12/17/181101
10月のハセツネのボランティア参加も、少しとはいえ、スタッフの視点でトレランを考えることができたのは今までにない経験でした。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/10/12/210413
そして、意外にも一番よかったことは、22年ぶりにアキレス腱の故障を再発させてしまった時に、過去の自分と向き合えたことでしょうか。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/07/23/001752
上の記事を書いたときは、歳をとって故障とうまく折り合いを付けられるようになっていたことに少し救われた気持ちになっていたのですが、最近は別の側面が気になっています。
それは、私が、当時自分で思っていた以上に苦しんでいたんだなということが、やっと今になってわかったんだなということです。
当時の倍以上の年齢になって、高2の自分がほぼ他人となった今にしてわかった痛みと苦しみでした。
アンジェラ・アキの「手紙~拝啓 十五の君へ~」とも似た状況なのかもしれません。
ただ、私には当時の自分のような誰かにエールを送ることよりも、痛みや苦しみが当事者の行動にどのような影響をあたえているのか、その当事者自体にはわからないのだということ、そのことが心に引っかかっています。
今年、色々な痛みや苦しみを抱えたトレラン関係者は数多くいると思います。
でも、たとえ20年以上かかっても、わかることがあるというのもよくわかりました。
わかれば、いつか何かできるかもしれません。
その希望だけは2018年に持ち越したいと思います。

一言に凝縮されると、悪くはない、ですが、そう言えるまではやはり、私は自分自身の記憶と記録を基に考えなくてはなりませんでした。
悪くはない。
軽い言葉に聞こえなくもないですが、その言葉に至るまでの経緯には、きっと過剰なものがあるはずです。
私は自分の過剰な自意識を鎮めるために記事を書いています。
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/08/17/194217
来年も過剰なものを踏まえた上で、悪くはない、と言えるような1年になることを、この山で祈ってきたいと思います。
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京都市の最高峰、愛宕山の明日は晴れの予報です。
元旦から早起き、正直苦手です。
末筆ですが、皆さんがよい1年を、少なくとも悪くはない1年をお迎えになることを願っています。