梅雨の間にあまり走らなかったのですが、何をしていたかというと、読書をしていました。
晴耕雨読ならぬ晴走雨読といければよかったのですが、走らずにただ読書ばかりしていました。
というのも、数ヵ月前に近所に新刊の本屋さんができたおかげで、にわかに読書熱が高まっているからなのです。
全国的に本屋さんが減り続けているなか貴重なお店だと思いますので、トレラン雑誌はもちろんのこと、他の気になる本もそのお店に注文して購入することにしています。
いわゆる応援消費だなという自覚がありますが、本が売れない時代の勇気ある出店を、買うことで応援したいと思っています。
前置きが長くなりましたが、以下に紹介する本も、そんな経緯で入手しました。
『那須雪崩事故の真相 銀嶺の破断』阿部幹雄https://www.yamakei.co.jp/products/2818140240.html
2017年3月27日に栃木県で起きた那須雪崩事故のルポルタージュと、雪崩についての科学的な検証が記されています。
この雪崩事故では、7人の高校生と1人の若い教員が命を落としています。
私は当時この事故に強い関心を持っていて、記事でも言及したことがあります*。
2年を超える時を経てこのような検証本が刊行されたことは、非常に意義深いことだと思います。
詳細な紹介や書評はできないので、簡単な感想文を記しますが、自身が別の山岳遭難事故の生還者であるという著者や、生き残った生徒の当事者意識には学ぶものが大きいと思いました。
生徒たちの証言には、何と表現すれば正しいのかわかりませんが、生々しい恐怖とそれを言葉にして人に伝えた勇気に胸がつまる思いです。
私自身、程度は軽いとはいえ、山の事故で負傷した経験があるため**、事故の状況を語ることによって起きるフラッシュバックのようなものに悩むことはあります。
そんな辛さをかえりみずに、証言した勇気と強さに敬意を覚えます。
なお、私が当時強く憤りを覚えた引率教員の発した「経験的に絶対安全」という言葉には、著者の阿部幹雄氏が静かに強く反論しています。
以下p41より引用~
「絶対安全」「100パーセント安全」という判断。登山において、そんなことは考えられない。登山では100パーセントの安全を目指すけれど、私たちにできることは危険の確率を下げ、安全率を高めるだけだ。
~
登山者としては基本の基である思考様式ですが、どうしてもおろそかにしがちなものでもあります。
常に肝に命じて行動で表せる登山者でありたいと思います。
*思いと安全
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2017/08/18/203242
**竹仙坊骨折抄
http://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2018/04/22/063505