竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主です。藤沢周平が好きです。

『海をあげる』(著・上間陽子)ー読書感想文2021夏

ちょうど一月ほど前になりますが、今回の緊急事態宣言が出る直前に八ヶ岳に登山に行きました。
その行き帰りの特急あずさで、『海をあげる』(著・上間陽子)を読了しました。
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沖縄出身の社会学者の、自身の研究テーマを含めたエッセイ集です。
この本が語りかけてくることは、恐らく誰もが人生のどこかで向き合わなければならない課題だと思います。
今現在どんな人生を送っているかは関係ありません。
大げさでなく、日本で生活する人は誰であれ、皆読んだ方がいいと思います。
内容については紹介しませんが、覚悟しておいた方がいいかなということがあります。
それは、この本の帯に使われている「もう、これ以上泣けない」という宣伝文句について。
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よく読めば書いてある通り、ここで使われた「泣ける」は、いわゆる「涙活」的な涙でカタルシスを得られるという意味ではありません。
私は泣けませんでしたが、この本を読むことで流される涙は、心の深くて暗い奥底から絞り出されてくるようなものではないかと思われます。
もし私が泣いていたとしたら、その涙には暗くて底の見えない、ある種の罪悪感が含まれているのではないでしょうか。
もし読まれるのなら、心に余裕があるときに読むことをお勧めします。