竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主です。藤沢周平が好きです。

4時間57分ーFTRみなの50K2022レポート1

2022年6月26日に開催されたFTRみなの50Kに出場し、30km過ぎの地点でリタイアしました。
時刻は正午。
7:03のスタートから4時間57分が経過していました。

この大会のスタート・フィニッシュ会場は皆野スポーツ公園で、野球場のわきにスタート・フィニッシュゲートが設置されていました。
今回は3分おきのウェーブスタートが採用されていて、選手は各自のウェーブごとに整列して順次スタートしていきます。

これは私のいたBウェーブで、7:03に出発しました。
軽く驚いたことに、近くの家のベランダから手を振って応援してくれている人達がいました。
そういえば7:00にAウェーブがスタートする際には、花火も上がっていました。
歓迎されているのかなと思うと気分も上々です。
スタートからは、6km付近にあるウォーターステーションW1を目指してひたすら登ります。
コース全体ではロードが40%を占めるのですが、この序盤も大体ロードでちょこっとトレイルという感じでした。
登りきった先の釜山神社には7:50ごろに到着です。

秩父地方は狼・山犬信仰が盛んで、なかでも有名なのは三峯神社ですが、ここ釜山神社も狛狼でした。
ハセツネでおなじみの武蔵御嶽神社も狼信仰ですね。
スタート前のブリーフィングで奥宮さんが寺社への敬意も忘れないでという話をしていましたが、個々人の信仰の事情はあるにせよ、山を走る者としては大切な心の持ちようだと私も思います。
なお、狼信仰については『オオカミの護符』(小倉美惠子)が詳しいです。
https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/126291/

釜山神社を抜けた先にあったW1には7:55ごろに到着しましたが、直後にAウェーブの選手達が大量になだれ込んできました。
どうも集団でロストしてしまったようです。
「トップ選手以外皆ロストした」という声も聞こえてきましたが、思い出したのは神社の少し手前で、コースわきの山道からキャッキャワーワー大きな声がしていたことでした。
高校生とかの集団が楽しさのあまり歓声を上げているのかと思っていましたが、どうやらロストした皆さんがあれこれコミュニケーションをとっているざわめきだったようです。
声の印象は楽しそうに聞こえたのですが、状況は全く違いました。
W1出発後はスタートから12km弱のA1へ向かいます。
途中いくつかの山を越えて行きますが、眺望の開けたところも何ヵ所かありました。
真ん中に流れるのが荒川。

この川をたどっていけば家に帰れるのかとも思いましたが、何十キロもある遥かな道のりです。
思えば遠くへ来たもんだってなところで先を急ぎます。
この日の目標タイムは50kmで8時間以内に設定していました。
走れるところはスピードに乗って、走れないところもパワーウォークで、とにかくプッシュすることを心がけていたのですが、それが後々気力が尽きる原因になったのだと思っています。
それでも、パフォーマンスは悪くはなく、快調に走ることはできていました。
11.7km地点のA1秩父高原牧場には1時間40分弱で到着しました。

暑さの影響はあり、500mLのソフトフラスク1本が既に空になっていて、もう1本にも手をつけ始めていました。
バナナのほか、ミニトマトやフルーツポンチなどさっぱりしたものを中心に食べて、コーラのアクエリアス割りを何杯か飲んで、といった感じでエイドを後にします。
A1出発後は下りトレイルが中心で、とても快適に走ることができたました。
とてもよい道で気持ちよくて仕方なかったのですが、高度を下げるにつれて強い暑さを感じるようになります。
下りきった先の集落からW2がある二十三夜寺までの登り返しは、もう既に灼熱でした。
W2は16.4km地点、到着時刻は9:22でスタートから2時間20分ほどが経っていました。
暑さのダメージで、身体の疲れは感じないのに、走りたくない気持ちが出始めてきています。
ここでコーラのアクエリアス割りをがぶ飲みして、少し気持ちを休めることにしました。
かぶり水がありがたかったです。
WSにしては長めの7分間の滞在で出発しました。

二十三夜寺からA2美の山公園までは4.5km。
ほぼ山道の登りで木陰に入れたこと、わずかでもまた標高が上がって気温が下がったことで、少し元気を取り戻しました。
あと、森のなかを登る道が心地のよい道だったこともプチ復活の一因でしょう。
この日走ったトレイルはどこも気持ちのよい山道で、皆野町のトレイルのファンになってしまいました。
来年、またチャレンジしにきたいと思います。
さて、山道を登りきって美の山公園の駐車場に設置されたA2に到着したのは10:02、スタートから3時間弱経っていました。

A2では「全部気のせい!」でおなじみの北島良子さんが元気な声で選手を鼓舞していました。
ここでは冷やしうどんが美味しかったですね。
少し元気を取り戻してA2を出発、しばらくは美の山公園内の歩行区間を進みます。
歩いているうちに気分がまた少しずつ上向いてきました。
武甲山に、

両神山

秩父地方を代表する山々がよく見えています。
歩行区間が終わったあとは走れる下りトレイルです。
繰り返しになりますが、皆野のトレイルは走りやすくて最高です。
適度に標高も稼げるのでよいトレーニングができると思います。
そんなトレイルを快調に走って下界に下りると、また暑さが待っていました。
暑さにあたると、とたんに気分が悪くなっていきます。
このあたりから、身体は動かせるのに気力が伴わずパフォーマンスを上げない圧力がかかるようになります。
そんな状況でロードをこなしながら、A3手前最後の山場、龍ヶ谷城跡に取りつきました。
登山口のの祠で鈴を鳴らしてこの先の安全を祈願して登り始めたのですが、この龍ヶ谷城、意外と長いのです。
龍という名が山容を表しているのかもしれませんが(知らんけど)、尾根道が予想していたよりも長く続いていましたが、これまた走りやすいトレイルでした。
しかし、ここまで来るともう快調に走るわけにはいかないくらい、暑さのダメージが蓄積しています。
走れたは走れたのですが、はっきり言って走るのが楽しくなくなっていました。
足腰には全く問題がないにもかかわらず、身体の気力を司る部位が、黄色信号を出しています。
具体的にリタイアを意識し始めたのは、龍ヶ谷城を走り終え、スタート・フィニッシュ会場でかつA3のある皆野スポーツ公園に向かうロードを走っているときでした。
時刻は11時を過ぎて太陽はカンカン照り。
走れてはいるのですが、A3でやめるんだったら今のうちに走っておこう、くらいの気持ちでした。
ただ、まだリタイアを確定させたわけではなく、このペースでA3に入ることができれば、目標の8時間くらいでフィニッシュできる、そんな計算も頭のなかにはありました。
行くも行かぬも、とにかく走る。
この追い込みがさらにダメージを蓄積させたのかもしれません。

A3には11:35に到着、スタートから4時間32分が経過していました。

ここでは最低でも11:45までは滞在して気力が戻るのを待つという作戦を採ることにします。
かぶり水をして、コーラなどの補給と水分の補充も済ませて、提供されていたジェルも2本流し込んで、やることは全て済ませました。
あとは先に進む気力が湧いてくるのを待つだけです。
汽笛を前触れにして、秩父鉄道が誇るSL列車、パレオエクスプレスが登場したときは盛り上がりましたね。

全A3が沸いた!
トレイルランナーもこのときばかりは撮り鉄へと変貌します。
そうこうしているうちに時刻は予定の11:45を過ぎて、11:48を指していました。
そこまでに、とりあえずエイドアウトはしておこうと思えるまでは回復し、歩いてA3を後にしました。
スタートから4時間45分が経過しています。

とはいえ、出発後も気力は充分に戻ってきていません。
太陽が燃えている、ギラギラと燃えている、そんななか、皆野の街中をトボトボと歩きます。
A2~3間を走れていた時の気力が戻るのを待ちながら、トボトボ歩みを進めます。
誘導のボランティアスタッフに声援をもらいつつも、やはりトボトボ歩みを進めます。
ここで、覚悟を決めました。
12:00までに気力が戻らなければそこでリタイアする。
11:55、平地のロードを少し走ってみましたが、すぐに気力が尽きてしまいます。
それでもなんとか12:00までは進み続けました。
ちょうど道路をくぐるトンネルの入り口で正午のチャイムが鳴りました。
時計を見て、たまゆらのためらいもありましたが、リタイアを決心しました。
黄色信号は赤信号に。
スタートから4時間57分が経過していました。