竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主です。藤沢周平が好きです。

夜に駆ける―UTMF2022レポート4

UTMF2022のレポート第4段です。
昨年途中で執筆を中断していましたが、2023年のUTMF改めFUJIが始まる前に、全編を仕上げてしまいたいと思っています。
ハセツネ30K2023はしばし後回しにします。
↓以前の記事はこちら
巻き戻した春ーUTMF2022レポート1
https://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2022/05/10/235825
旅立ちの刻ーUTMF2022レポート2
https://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2022/05/17/221852
憧れを追いかけて―UTMF2022レポート3
https://chikusendobo.hatenadiary.jp/entry/2022/05/27/202125

ここからは、U2麓(43.2km)を出発し、U3本栖湖(53.7km)を経てU4精進湖(65.6km)まで、夜に駆けます。

U2麓を、スタートから6時間40分が経過した22:40に出発しました。
ここから端足峠への登り口までしばらくは、東海自然歩道の比較的フラットなトレイルを走ります。
気温は少し下がってきましたが、アームカバーを上げるかどうかはギリギリのところで、夜霧も降りそうで降らなずと、温度的にも視覚的にもかなり走りやすい気象条件でした。
前回参加したUTMF2016では同じ道を逆走しているので、ある程度勝手もわかっています。
前夜までの雨の影響でぬかるみがひどいのではないかと予想していたのですが、意外にも路面は良好で、時折小さな水たまりがあるくらいでした。
UTMF2016では、豪雨の時間帯にひざを覆う深さの水たまりの中を走った記憶があります。
恐らく雨が降っている最中でなければ、水はけのよいトレイルなのかもしれません。
いい感じで走れてはいますが、飛ばしすぎて後でつぶれるのは避けたいのはここまで来ても変わりません。
周囲の選手を見ながら、基本は自重ベースで自分のペースを固めていきます。
途中、道を横切る木の枝からさらに小さい枝が何本も垂直に上に伸びている木がありました。
不思議だなと思って見渡すと他にも同じような木が見つかり、よくあることなんだなと思って写真に撮りませんでした。
時間帯は23時を過ぎでしたが、まだ全然眠くなかったので、たぶん幻覚ではないと思います。
…たぶん。
撮影していたらそれが証明できるので、その点で心残りです。
周囲は真っ暗ですが、ところどころ視界の開けた場所からは真っ黒な富士山が見えました。
後で月も出てきたので、夜空には多少の明るさがあったのかもしれません。
短縮UTMF2016では、このあたりで集団ロストに巻き込まれかけて一人でパニックになったのですが、この夜は粛々と進めています。
平和です。
雨が降っていないとこんなに平和なトレイルなんだと、噛み締めながら走ります。
やがて端足(はした)峠への登山口に到着します。
ここには立派な公衆トイレがありましたが、利用せずに先を急ぎました。
峠を越えればU3本栖湖はすぐ近くです。
端足峠への登りはそれなりに傾斜がありました。
急ぐこともないので10人くらいのパックの最後尾にくっついて登っていましたが、そのうち一人二人と脱落してくる選手と入れ替わるうちに、ちょうど峠のてっぺんでBさんに追いつきました。
端足峠越えの道は、峠から本栖湖側への道の方が傾斜が急で、かつ所々に浮き石があり、なかなかスピードに乗れない下り坂でした。
急なつづら折りの山道を、足下に注意力を集中させてひた下ります。
登りよりも下りの方が、実際よりもかなり長い時間に感じました。
気の抜けない山道を終えて短いロードに出てから少し走ると、U3本栖湖に到着します。
U3本栖湖は変更前のコースで62km、変更後は53.7km地点になっていました。
エイドの計測マット手前のトイレに立ち寄る前に見た時計では、午前1時ちょうどくらいでした。
6分ほどトイレに時間をかけてからエイドインします。

U2麓の出発からは2時間くらいで到着しました。
ここ本栖湖のエイドは、UTMF2016の時には屋内のエイドで、大雨が降るなか、屋根の下で休むことができて心底ほっとしたことを憶えています。
ただし、今回のエイドは屋外のキャンプ場に設置されていて、ほんのり冷たい夜気の中淡々と補給を済ませて出発しました。
Bさんとはエイドアウトのタイミングで別行動になります。

U3出発後は、本栖湖を取り囲むトレイルを時計回りに辿ります。
出発直後は急登がいくつか現れ、疲れ始めた脚にダメージが蓄積していきますが、そこを乗り切って稜線に出てしまえば、しばらくは緩やかな登り基調のアップダウンに変わります。
東海自然歩道にも本栖湖周りのトレイルにも言えることですが、雨がまさに降っている状況でなければ、前日までの雨がひどくても、路面は走りやすいコンディションが保たれていました。
ちょっとした岩場を過ぎてからは、少しアップダウンが激しくなり、標高1328mの本栖湖パノラマ台に向けて高度を上げていきます。
たどり着いた先のパノラマ台のピークで一息ついて、月夜の富士を望みます。

実物は写真で見るよりも明るく輝いていました。
パノラマ台から烏帽子岳までのトレイルには、右側が切れ落ちている区間があります。
しかも、道が細いうえに足元がザレていて崩れやすいので、非常に気を遣いながら通過しました。
烏帽子岳からも月夜の富士。

幻想的、と言うのは簡単なのですが、その言葉を超えた感想を抱きました。
言葉にできないものって、いくらでも出会ってしまうものなのですね。

烏帽子岳からは本栖湖岸の樹海を目指して一気に下ります。
大会前に晴天が続いている場合には、ザレて足元がもろい可能性もあるので注意が必要です。
烏帽子岳を下り切ってからU4精進湖までは樹海を走ります。
私はかなり、夜の樹海が好きです。
足元は根っこが多く、微妙なアップダウンも多々あって、けっこう走りにくいのですが、木々に囲まれて意外と心が落ち着きます。
夜は元々暗いので、暗さに伴う薄気味悪さが目立たないのかもしれません。
たまに射す月明かりも良い雰囲気でした。
U4精進湖は、コース変更前は74km地点だったのが、変更後は65.6km地点になりました。

到着時刻は3:53、スタートから11時間53分経過しています。
U3本栖湖からは12km弱でラップは2時間47分弱。
1日目の夜を駆け抜けて、フィニッシュまであと100kmを切りました。
少し落ち着いて、愛でましょうかね。

夜桜を。