竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主です。藤沢周平が好きです。

テントウ虫のサンバー菅平スカイライントレイル2017レポート3

菅平スカイライントレイルランレース2017のレポート第3段です。
レース後一週間が経ちましたが、傷が癒えてないので、激しく動かすトレーニングはまだできません。
その傷は小根子岳の下りの先で負いました。

復路のA3を出発したのはスタート後5時間20分経過後、12:20過ぎでした。
この日は快晴で、体は太陽にじりじり焼かれるのですが、気温自体は菅平の平地(とはいえ1200mはありますが)で15℃と、暑いとはいえない気候でした。
太陽に焼かれるので暑く感じるのですが、風が少し強く吹けば寒くも感じるという、体感の変化が目まぐるしい日でした。
もしかしたら、私が感じていたのは「熱さ」なのかもしれません。
太陽の遠赤外線で焼かれる熱さだったのでしょうか。
去年のレースは今年よりも6℃高かった上に、南風が吹いていたようです。
今年は北風でした。
去年は暑さも感じていたのでしょうが、今年は熱さだけなので、楽といえば楽だったのかもしれません。

根子岳を目指す登りは木が全く道をおおっていない山道で、結構なガレ場でもあります。
一つ一つの石は大きくはないものの、浮き石ばかりで神経を使います。
また、雨が降ったら確実に川になるであろう形状をしています。
晴れてて本当によかったと思います。
ここは背中を太陽に焼かれるために登るようなセクションなのですが、目指す小根子岳が左側の視界に入るので、縮まっていく距離を励みになんとか歩みを進めます。

根子岳の山頂に着いたのは13:20くらいです。
スタート後6時間20分ほどでした。
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昨年撮った写真の時間とくらべてみると、30分近く早く到着しているようです。
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昨年は雲が多いのですが、視界の広さに爽快感を感じていました。
今年はドーンの北アルプス
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アップでもドーンです。
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白く輝く雪と、青くけぶる大地。
絶景でした。

根子岳からの下りは、笹原と森の中を下ったのち、往路のランナーとの合流以降はもと来た石の多い山道です。
笹原も森も快適に下ることができましたが、浮き石がここにも多いので注意が必要です。
こうした下りは集中を切らさないことと、自分が上手に走り抜けるイメージを保つことが大切です。
急に真面目くさりましたが、要はヤマケンさんの言葉を思い出しただけなのです。
ヤマケンさんは、トレランの下りで「俺は忍者!」と思うことがあるという趣旨を、何かのインタビューで語っていたことがあります。
私はヤマケンさんと同い年なので親近感を勝手に抱いているのですが、要は、この下りで「俺は忍者!」と、自分に言い聞かせただけなのです。
ただ「俺は忍者」だけだとリズムをつかみづらいので、こういう時は脳内ステレオの力を借ります。
リンダリンダのメロディーもお借りして、ニンジャニンジャ~、ニンジャニンジャニンジャ~♪
登り始めのところまではこれで無事に下りきることができました。
ニンジャニンジャは実用的だと思います。

根子岳を下りきった先のT字路には、簡単なウォーターステーションがありました。
とりあえず脚を止め、自分がどれだけ水分を持っているか確認だけして出発しました。
このとき山をニンジャニンジャ下ってきた興奮があったので、少し落ち着こうという意識もあって止まったのですが、充分に落ち着かないまま出発したことがケガにつながりました。
T字路を右側に向かって出発すると、菅平牧場とゴルフ場に挟まれた、ガレた土の道を下ります。
この坂の途中で石につまづき、転倒しました。
傾斜がそれなりにあるため、出した手が地面に着くのと同時くらいに胸と右膝、瞬間遅れて左ももと左膝が落ちました。
ほぼヘッドスライディングです。
しかも右膝は石に強打しました。
フィニッシュ後に宿でテーピングを剥がすと、右膝はお皿の上がぱっくりと裂けていました。
今年は1月の高尾山天狗トレイル以来、ケガに繋がるレースでの転倒は二度目となります。
丸々一週間が経っても、お皿回りが鈍く痛んだり、座りっぱなしの時間が長いとひどい痛み発作が出たりします。
こうなってしまうと自棄にもなってきて、転倒虫とかお転倒様とか自称したくなってしまいます。
赤、赤、赤備えの衣装を着けた転倒虫が一人きり、サンバに合わせて転びだす…。
痛かったです。

それでも、レースは続いています。
痛みをこらえながらコースからロールアウェイして、切った指を予備の水で洗い流しながらとぼとぼ歩き出します。
転倒前は、フィニッシュ後に何を食べるかとか、一緒に参加している友人が戻ってくる前に何をしようかとか、そのとき考えなくてもよいようなことが頭にちらついていました。
ゴールラインまでは5,6kmです。
要は気の緩みだったのだと思います。
大きな山を下りきったことで、どこか安心してしまっているのです。
思えば去年もこの坂で足を捻りかけて転んでいました。
40km近く走ってきて足腰に疲れがたまっている上、メンタル面でも集中力が保ちづらくなる時間帯です。
暑いし、熱いし…。
次に出るときは、この坂は走らない。
それが無難でしょう。

痛みで下りは走れなくなりましたが、前には進まなくてはなりません。
3レースぶりの完走は、すぐそこまで来ているのです。
石だらけの坂を下りきり、砂利道をジョグでしのぎ、ゲレンデをスキップに毛の生えたようなステップで下ります。
二度目のA2は最後のエイドで、フィニッシュまでは残り3kmほどです。
やっぱりみすゞ飴をいただき、ぶどうを好きなだけ食べました。
擦り傷を洗い流してかぶり水をして、最後の太郎山の登り下りに向かいます。

太郎山という名の山は上田の市街地近くにもあり、上田verticalのコースになっています。
ここ菅平の太郎山は、下の太郎山に比べれば小さい山ですが、42kmを越えて進んできた身体にとっては厳しい山です。
下りで膝に痛みを抱えてしまったので、ここの登りはできる限り走りました。
というか、ここで走らなければ、もうその先は走れないのです。
山頂を越え、最後のゲレンデの下りに入ると、案の定走ることは出来なくなり、変なスキップを刻んで下ります。
サンバのリズムとかでは全然ない、おかしなステップでした。
スタッフや応援の方の「後は下りだけだよ!」の声援に、「下りは痛いー!」としか応えられませんでした。
でも、声援自体は嬉しかったですよ。

ゲレンデを下りきると、あとはロードを100mちょっと走ればフィニッシュです。
農協前で車道を横断しますが、このときはランナー優先で車をバッチリ停めてくれていました。
ありがたいのと申し訳ないのとで、心がいっぱいになります。
トレイルランなんて私の楽しみでやってるだけなのに、支えてくれて、道を譲ってくれる人がいるのは何とも感慨深いものです。
リゾートセンターの脇を回り込んで、正面の会場に右折します。
フィニッシュです。
私にとっては4月初旬の青梅高水以来の完走です。
途中でケガをしましたが、ここまではたどり着けました。
私が菅平に大学のラグビーサークルの合宿で初めて来たのが1997年の9月です。
もう20年が経ちましたが、ラグビーと菅平の町に敬意を表して、ゴールラインの向こうにトライしました。
7時間42分17秒のトライ、もといフィニッシュです。
去年より33分近くタイムを縮めました。
あの、いきなりトライってなんなの?と思う人もいると思いますが、ゴールラインの向こうの地面にボールをつけることで5点入るラグビーの得点方法です。
用語としてのトライの説明をしてもピント外れだとは思いますが、まあ、トライしたのです。
この日トライしたランナーが他にいたかどうかはわかりませんが、本当に気持ちのよいフィニッシュでした。

次は美ヶ原の80kmが待っています。
転倒虫は次から返上したいと思います