竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主です。藤沢周平が好きです。

鬼が笑う話ー奥三河パワートレイル2017余録4

4月にDNFした奥三河パワートレイルの会場で注文したオリジナルTシャツが、つい先週届きました。
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こちらは背中。
今年はA4四谷千枚田でリタイアしましたが、来年はできれば再挑戦したいと思っています。

思い返せば私は、DNFしたレースに再挑戦したことがありません。
今年は既に3レースDNFしていますが、去年までにDNFしたレースは、2015年の比叡山インターナショナルだけでした。
その日は5月末にもかかわらず33℃まで気温が上がり、暑熱順化のできていなかった私は、体力よりも何よりも気力がもたずに、コースの半分ほどでリタイアしました。
このときは友人Cさん、Dさんと参加していましたが、完走はCさんのみでした。
CさんとDさんとは今回の奥三河パワートレイルでも一緒に参加していて、結果は全く同じで、完走はCさんのみでした。
Dさんと私はなぜかいつもリタイア仲間です。

でも、比叡山も今回も同じなのですが、私はリタイアしてから家に帰るまでの時間をずいぶんと楽しく過ごしてしまうようで、悔しい!とか、何くそ!とか、今度こそ!とか、そういう気持ちがほとんど残りません。
この失敗から何も得ないお気楽さが問題なのです。
悔しくないから動機が生まれず、強いて言うならば成長への意志も生まれないのです。
森見登美彦有頂天家族』の主人公狸・下鴨矢三郎ならば、「阿呆の血のしからしむるところだ」と一言で片付けそうですが、私は狸というよりは狐に近い容貌をしていることもあり、それで済ませるわけにいかないことはわかってはいます。
でも、リタイアしたことやそれに伴う感情や気づき以外にも、その日のトレイルランニングに附随する諸々はたくさんあるわけです。
それをすべて受けとめることに、私の心はいっぱいいっぱいになってしまうのです。
だから、悔しさから向上心や克己心を呼び起こす余地が、心の中にないのです。
こういう心の持ち方はある意味欠陥とも言えるのですが、どうも私は、特にトレイルランニングとはそういうつきあい方しかできないようです。

そんな、心に余裕がない私ですが、見たことのない景色を見てみたいという好奇心は強いのです。
阿呆の血は狸の専売特許なのかもしれませんが、狐目の男である私は、見られなかった景色をこの狐目で見てみたいという欲望を強く持っています。
三河パワートレイル2017では、70kmのうち48kmまではたどり着くことができましたが、残りの22kmをまだ見ていません。
先の比叡山も5月の櫛形も同じで、残りの景色を見ていません。
成長への意志はさておき、好奇心に衝き動かされることはよくあることです。
この先を一生見ないのか?
そういう問いかけはよく心に浮かんできます。
特に奥三河の山には、このままで終わるには名残惜しいものを感じました。

ということで来年は、スケジュールの許す限り、奥三河パワートレイルに再挑戦したいと思います。
UTMF2018がどうなるか、気になります。
まあ、来年の話なので、鬼が笑っています。
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でも鬼には、極力笑って待っててもらいたいものです。

装備と仇討ちと審議ー菅平スカイライントレイルラン2017余録2

部屋とワイシャツと私では決してなく、菅平スカイライントレイルランレース2017の装備などの備忘録です。

今回は赤備えという特殊条件があり、いつものレースとは違う衣装選びをしています。

頭:菅平参加賞バフ(赤)
&モントレイルサンバイザー
首:手拭い(赤)
シャツ:バイロ半袖(赤)
アンダーシャツ:マーモットPP素材
アームカバー:スキンズ
手袋:サロモン
タイツ:スキンズA400
ズボン:アシックスアートスポーツオリジナル
膝テーピング:ニューハレXテープ・Iテープ(赤)
カーフスリーブ:CEP
靴下:サロモン
靴:テクニカインフェルノ
リュック:オスプレーデューロ
レインジャケット:サロモンボナッティ
レインパンツ:ノースフェイスストライカー
水:ソフトフラスク500×2、250×2(予備)
トライ:ラグビーボール型ビーチボール

赤備えコンテストのチラモであった私には、やはり赤備え以外の選択肢がなく、上半身は真っ赤、下半身もテーピングは赤、後は黒基調でした。
ラグビーボール型ビーチボールはYahooで一個108円(送料の方が高いですが)、興味があれば覗いてみてください。
よければ一緒にトライしましょう。
W杯も近づいてきているので、ラグビータウンとしての菅平にも注目したいと思います。
今回なくしたものは、250mLのソフトフラスク1本でした。
菅平牧場とゴルフ場の間で転倒した際、どこかへ飛ばしてしまったようです。
まだ3回しか使っていなかったので、別れとしては早すぎるなと思いました。

仇討ちシリーズとしては、奥三河でリタイアした際の装備で今回完走できたため、一応の成果を出せました。
三河の仇は信濃で討ちました。
リタイアシューズのインフェルノ
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転倒はしましたが、クッション性の高さでよく脚を守ってくれました。
リタイアリュックのデューロ。
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背負い心地は抜群です。
このたび初めて、フィニッシュゲートをくぐることができました。
これからも頼りにしてます。

ついでに審議の弘樹の御守です。
デューロの肩に結われつけられた青い布は、奥三河パワートレイルのA3小松で有無を言わさず結わえ付けられた、石川弘樹さんのTシャツの切れ端を御守に加工したものです。
これを結わえ付けられて以来、2レースDNFが続いたため、今回ダメならば外す、もっと言うならば捨てる判断を迫られるところでした。
今回は完走できたため、処分しないことに決定しました。
私がトレランを始めたとき、最初に読んだ入門書が石川弘樹さんの『トレイルランニングを楽しむ』でした。
内容に過不足がなく、写真に頼らない丁寧な解説に好感を持ちました。
今でもこの本は良書だと思っています。
石川さんはそういう意味で私の先生で、尊敬するトレイルランナーです。
日本のトレイルランニングは彼が切り開いてきたと言って、全く過言ではないと思います。
だからこそ、青い布切れとはいえ、捨てるような選択は取りたくありませんでした。
色々な方面でよい結果になったと思います。
いつまで弘樹の御守ネタで引っ張れるかはわかりませんが、先生の教えを思い出すよすがとして大事にしたいと思います。
とかいって、またDNFしたら今度こそどうしてくれようかという気持ちも多々ありますが…。

フィニッシュからの35分ー菅平スカイライントレイルラン2017余録1

菅平スカイライントレイルランレース2017のフィニッシュ後の回想録です。

私自身のレースは終わりましたが、今回一緒に参加した友人Bさんのレースは、まだ続いているはずです。
BさんはSTY2018のエントリー資格を得るために、先月の櫛形ウインドトレイルと今回の菅平スカイライントレイルで、ITRAポイントの獲得を目指していました。
しかし、櫛形ウインドトレイルは脚の痛みが出て途中関門でタイムオーバーとなり、ポイント獲得とはなりませんでした。
今回は山が大きいので、長い下りで痛みが出ないか心配していました。
痛みが出たら、フィニッシュも9時間は超えるだろうと予想していました。

私は宿に戻ってから出きる片付けを済ませてお風呂に行きました。
テーピングをはがしてケガの状態を見て、同じタイミングで脱衣場にいた人たちとケガトーク、ならびにレースの振り返りトークと、少しのんびり過ごしていました。
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着替えは参加賞Tシャツ。
コットンライクな生地で着心地がよかったです。
去年のFTRの参加賞Tシャツもこの素材でした。
私にとっては好ましい流行です。

お風呂を上がってから部屋に戻り、軽い片付けをしてまさに会場に向かおうとしたところ、Bさんから電話がありました。
数分前にフィニッシュして、既に宿の前にいるとのことでした。
見事に9時間を切ってのフィニッシュです。
立ち合うことはできませんでしたが、早い分にはよいのです。
これで念願の初ITRAポイントを、3ポイント獲得しました。

とはいえ、すごいのはここからなのです。
宿に帰って来たのが16時ちょっとでしたが、帰りの路線バスが16:37出発なのです。
本当はその一本後の上田行終バス、18:37に乗るつもりだったのですが、思いの外Bさんのフィニッシュが早かったため、16:37の線が出てきてしまったのです。
35億、じゃなかった、35分くらいしか時間はありません。
もしかしたら16:37に乗れるかもしれないけど、という話をするとBさんは、まぁ頑張ってみると言って、さっとお風呂の準備をして部屋を出て行き、カラスの行水よりは長く入っていたものの、さっと上がってくるや、着々と荷物を片付け、16:30には出発できる状態に身支度を整えてしまいました。
お風呂と着替えと片付けで30分弱です。
圧巻のフィニッシュワークです。
これには感服しました。

ちなみにフィニッシュワークという言葉は、サッカーなどではシュートなどフィニッシュ「まで」のボール繋ぎを指すようです。
私は、レースのフィニッシュ「から」始まる帰宅準備の一連の作業をフィニッシュワークと勝手に呼んでいます。
エイドワークにヒントをもらったのですが、本来的な意味ではゴーホームワークくらいが適当なのかもしれません。
他にいい言葉がないか、まだ検討の必要性を感じています。

16:37のバスには地元の中学生がたくさん乗っていましたが、席を二人分に寄せてもらう親切にも恵まれ、なんとか座ることができました。
上田までの50分を考えると、ここで座れたのは非常にありがたいことでした。
上田駅でみすゞ飴をお土産に買い込み、17:50過ぎの新幹線で帰京しました。

それにしても、人それぞれの得手不得手はありますが、この日見たBさんのフィニッシュワークには感服するばかりです。
櫛形ウインドトレイルの時も時間がないなかフィニッシュワークをこなしていましたが、今回はそれ以上に時間がありませんでした。
今回私は、フィニッシュ後に2時間弱の余裕がありましたが、Bさんには35億、じゃなかった、35分しかなかったのです。
にもかかわらず、お風呂に着替えに片付け、全てきっちりこなしていました。
私の友人Aさんも準備は早いのですが、Aさんはフィニッシュ自体がメチャクチャ早いので、ここまで時間が差し迫った状況を乗り切るのを見たことはありません。
私は基本的にグズなトレイルランナーなので、鮮やかに素早くフィニッシュワークを決めることなどできません。
完走もポイント獲得もおめでたいことでしたが、同じくらいに素晴らしいフィニッシュワークでした。