竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主です。藤沢周平が好きです。

やっぱり歩いて帰ろうー信州戸隠トレイルラン2017レポート4

信州戸隠トレイルラン2017のレースレポート第4段です。
この台風の中、権現岳~赤岳の縦走の拠点まで行って引き返してきました。
それで更新できなかったのですが、その話はまた後日できればよいと思います。
いい加減フィニッシュします。
戸隠奥社の森を抜けて第3エイドに到着しました。
ここから牧場をループする「引き回し」コースに向かい、戻ってきた再度の第3エイドは40km地点になります。
そこからフィニッシュまでの10kmは、瑪瑙山への長くてだらだらした登りが特徴的で、残りはゲレンデを下ります。

晴れた戸隠牧場は緑色が柔らかく、本当に気持ちよかったです。
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コースはいったん牧場を登りきってから、下りに入ります。
ループが2つあるような形状のコースで、1度下りきって左に曲がると、2つめのループに入ります。
2つめのループは初めは下りで、下りきるといったん牧場の外に出るようです。
この牧場の外エリアは飛び石のない渡渉が2回、避けられない泥沼のようなぬかるみが2回と、なかなかハードです。
それまでどんなにきれいに走れても、ここで必ず靴を濡らすことになります。
むしろここまでたどり着いたら、足は絶対にびしょ濡れになると覚悟したほうがよいでしょう。
それはある意味、完走のための必須条件です。

足をビショビショにして牧場内に戻り、牧草地を登り返して左に曲がると、一つ目のループに戻ります。
ここでは牛の親子が出迎えてくれます。
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黒毛短角和牛でしょうか。
いつか、もしかしたら食卓でいただくことになるのかもしれません。
そのときはよろしくお願いいたします。
少し行くと馬の親子も。
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牧歌的とはこのことでしょうか。
ただ、その先の車道の真ん中で車にひかれたかランナーに蹴られたか何かで蛇が死んでいて、野生で生きていくのは厳しいなと思わざるを得ませんでした。
戸隠牧場のループは極力走るように、登りも急ぐように心がけました。
時間に余裕がなくなってきたため、頭とからだがバラバラだから走れません、とか言ってられなくなりました。
走らなくてはならないときには走る、当たり前のことですが、自分が納得してそれをやれるのなら、それに伴う苦しみは楽しみにもなります。

2度目の第3エイドは40km地点になり、関門時刻(出発関門)は15:00です。
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14:30前に到着しましたが、想定より30分遅いタイムです。
牧場だけは走っていても、それまでゆっくりしすぎていました。
ただ、このエイドからの残り10kmを2時間30分で進むことができれば完走のフィニッシュです。
フィニッシュできるかどうかある選手に聞かれたので、だらだらした長い登りで気持ちが切れなければ、と答えました。
私にしては珍しく、この日は周りのランナーとあまりおしゃべりしていませんでした。
1度目と2度目の第3エイドで少し話した以外、まとまった会話をした記憶がありません。
図らずも内省的なレースとなっていたようです。

最後のセクションです。
朝に登った瑪瑙山へ、朝とは違う登山道から登って行きます。
キャンプ場の中から登って行く道ですが、ここも信越五岳と同じコースになっています。
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ビニールをかぶって準備万端でしたが、今年は台風でコースが短縮になったため、選手がここを通過することはありませんでした。
しっかり準備されている姿を見ていただけに、残念な思いがひとしおです。
それでも、安全に運営するためには致し方のないものだと思いますし、今のところ適切な判断であるとも思います。
そして、私としてはどうしても、UTMF2016を思い出してしまいます。

瑪瑙山への登りは2段構えが2回続きます。
まず最初のイースタンキャンプ場からの登りは、樹林帯をダラダラと長く、斜度を変えて2段構えで待ち受けています。
比較的緩いけど長い登りを終えて右にトラバースすると、左側に急斜面の登りが見えます。
この急斜面は長くないのですが、樹林帯を抜ける手前に避けようのないぬかるみがあり、そこにかけてある木道も踏むと傾きます。
なんかのトラップでしょうか。
傾いた瞬間、思わずワー!っと悲鳴をあげてしまいました。
大人げないなと思ってましたが、通過後に背後から他の誰かが同様に悲鳴をあげているのが聞こえてきて、一人じゃないなと安心しました。
ただ、悲鳴をあげた方が怪我などしてなければよいのですが…。
そこを抜けると樹林帯が終わり、瑪瑙山への登りの第1段が終わります。

樹林帯を抜けると、1度下りに入ります。
私は2015年に出たときの記憶が曖昧になっていたので、これでもうあとは下りかと思っていましたが、そうは問屋が卸さないのです。
下った後に登り返しがあります。
それも急斜面の。
瑪瑙山への登り2段構えの、第2段です。
朝に登ったコースに途中から合流して、さらに斜度が上がります。
最後の登りです。
この登りはスキー場のコースになっているため、太陽が身体をじりじり焼いてきます。
この日はサングラスが必携でした。
この瑪瑙山への最後の登りは、最終盤の46km地点にあたります。
いい加減力も残っていないのですが、とにかく進むしかないのです。
歩みは止めず、でものろく、とにかく登りきりました。

瑪瑙山の山頂手前のリフトからは、おなじみとなった戸隠連峰高妻山
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少し行った先の瑪瑙山山頂からも。
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霞がかかったような、柔らかい景色が印象的でした。
下り始めもこのコンビが。
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ここまで来たか。
しっかり走れよ、と言われているようです。
ここに見えているゲレンデの下りは足下が土や草で、斜度は急なものの走りやすく、気持ちがよかったです。
戸隠連峰高妻山に向かって吸い込まれるような感覚です。

このゲレンデを下りきると右折します。
スタッフが「あと2km!」と声をかけてくれます。
あと2kmか、このとき時計を確認したら9時間8分でした。
制限時間10時間には余裕があります。
ゆるりと行ってもいいかなと思って右折すると、砂利道が始まりました。
左のアキレス腱に故障を抱えていた私ですが、このレース中は追い込んだり無理をしなかったりした甲斐があって、痛みの再発がなく済んでいました。
ただし、瑪瑙山への登りで若干違和感が出てきているのはわかりました。
同様に直前の下りで、6月に痛めた右膝にも違和感が出始めていました。
砂利道は硬い上に不整地で、足首や膝に細かいぐらつきを与えます。
ぐらつきが腱や関節に悪影響を与えるかもしれない。
あと、6月の菅平でフィニッシュまで5kmのところの岩だらけの道でこけちゃって、それで右膝を痛めています。
フィニッシュ前の集中力が切れやすい時間帯に、上の空で走っていたために起きたケガでした。
それもあったため、ここで走るのを避けました。
もうケガはしたくない。
もう歩いたって間に合う。
もう大丈夫。
歩こう。
2kmの砂利道をジャリジャリ言わせながら歩いて下ります。
走りません。
抜かれても気にしません。
がんばりません。
歩いて帰ります。

やがてフィニッシュが見えてきました。
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戸隠連峰高妻山も出迎えてくれています。
会場のMCも聞こえ出しています。
いったん砂利が切れるところがあったのでそこは少し走りましたが、すぐにまた歩き出します。
ゲレンデを下りきって、フィニッシュゲートへのストレートに入ります。
歩きながらMCのラッチさんの声にこたえて手を振ると、「自分のペースで来ていいから!」と声をかけてくれました。
走るつもりは毛頭ないのですが、ならば歩くよと、最後まで歩きながらフィニッシュしました。
9時間26分36秒、2015年のレースより2時間近く余計にかかりましたが、これが今の私なのです。

不思議なことに、この2ヶ月悩んでいた左足アキレス腱の痛みは、その後収まっています。
なんのセラピーか全くわかりませんが、50km走ったにもかかわらず快復に向かっているのです。
歩いて帰ったのがよかったのでしょうか。
トリプルマスターも嬉しいのですが、痛みが引いたことのほうが嬉しいと思っています。
戸隠の奇跡。
ちょっと言い過ぎましたか。
でも、あると思います!