竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主でしたが、2018年4月以降、骨折治療のためトレランは控えています。藤沢周平が好きです。

冬の晴れた海はーおんじゅくオーシャントレイル2018レポート

ずいぶん間が空いてしまいましたが、イセエビCUPおんじゅくオーシャントレイル10マイルレース2018のレースレポートです。
距離は最長でも16kmなのに大会名が長いでおなじみ(?)の、おんじゅくオーシャントレイルに初めて参加してきました。
名前が長いのは悪いことではなく、むしろその名前だけで大会の概要が掴めてしまう長所があります。
賞品はイセエビ!海と山を走る16km!
秀逸なネーミングセンスだと思います。

今回は御宿に足を踏み入れるのも初めてなので、町の空気に慣れておこうと前泊しました。
朝寝坊もできますし。
というわけで、前夜はゆっくり寝て、翌朝7:30に起床しました。
スタートは10:00なのでぶっちゃけ寝過ぎなのですが、寝てしまったものは仕方ありません。
宿の窓から外を見ると、砂浜にマーキングのコーンが置かれていました。
そして、その向こうの海には大勢のサーファー。
サーファーの早起きは有名ですが、既に100人以上は冬の海に乗り出しています。
支度と朝食を済ませて宿を出たのが8:50頃でした。
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この時間、海岸はまだサーファーだけのものです。
会場に近づくと、たぶんコースかと思われる山の遠景が見えていました。
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見えているところが本当にコースかどうかは定かではないのですが、この町の山の険しさを推定するためには必要な情報です。
立ち上がりの登りは短く、稜線のアップダウンはきつくはなさそう、といった印象でした。

会場は大きく3箇所に分かれていて、受付の町営ウォーターパーク、荷物預かりのクアハウス御宿、そして、スタート・フィニッシュのある月の砂漠記念館です。
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10マイルを走ってここに帰ってきます。
今年は派手目の鏑木さんによる、簡単なコース説明もありました。
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コース変更とぬかるみがひどいのとで、全体的に昨年よりもタイムが遅くなるのではないかということでした。
今回の足元は、はっきり言ってぬかるみには弱いフリューイッドフレックス2です。
大きな不安要因でしたが、この日のレースでこの靴を引退させることにしていました。
自分で決めたことだから、覚悟はしています。

レースは10:00にスタート、まずは砂浜を2kmほど走ります。
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海にはサーファーが大勢。
さっきまではサーファーのものだった海岸が、トレイルランナーとの共存の場となります。
この光景、他では見られないなと思いながら走っていると、なんだか楽しくなってきてしまいました。

砂浜が終わると、サンドスキー場の跡地へと向かう道のりをロードで繋ぎます。
町中では応援してくれている人が数多くいました。
地元の参加者、特に5kmの部には子供達もたくさんいるので、応援にも熱が入るのでしょう。
御宿町の皆さんにとっては見ず知らずの私ですが、それでも気持ちが温かくなります。

サンドスキー場跡地には序盤と終盤の2回来ることになりますが、そこをぐるっと回るフラットな道が、今回のレースで一番難しいトレイルでした。
何が難しいのかというと、足元がズルズルなのです。
砂混じりの土が水分を含んでいて、グチャッというよりはズルッという滑りかたをします。
踏んだ地面ごとスライドしてしまうような、大げさに言えば、春のスキー場のザラメ雪みたいな足元のやわさでした。
また、フラットとはいえ、左右の傾斜が微妙に付いていて、足をとられることへの緊張感が半端なかったです。
私の周囲は走ることができなくなっていて皆歩いていましたが、歩くだけでも大変な苦労でした。
笹がトンネルのように生えていて、なかなかの趣がある道なのですが、足元ばかり見て進まざるを得ませんでした。
顔を上げて走れればもうちょっと楽しめたんじゃないかなと思います。
もったいない。

サンドスキー場を抜けると、繋ぎのロードを経て海岸沿いの山に入って行きます。
全般的に、点在するトレイルをロードで細かく繋ぎながら走るようなコース設計がされていました。
山道はよく整備されていて、傾斜もほどよく、いわゆる走れるトレイルでした。
海に近い稜線では眺望のよい場所もあります。
気持ちよかったなという印象が残っています。
オーシャンの要素もまた楽しいものでした。
例えば、隠しビーチ、
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とでも言いたくなるような小浦海岸の風景。
インスタ映えのしない曇天でしたが、それでも心が洗われる気分になりました。
海を見ると、視界の広さによる開放感がやがて解放感に変わっていくような感覚になります。

その後も山道をロードで繋ぎながら走り続けます。
御宿の山道は、取りつきの登りは急ですが、すぐに稜線の極上トレイルに出ることができます。
また、心配していたぬかるみはほとんどなく、快適に走ることができました。
ズルズルで厄介なのは、サンドスキー場周りの低地だけでした。
楽しいなとは思っていたものの、山道自体も短いのであっという間に走り抜けてしまいます。
そうこうしているうちに、10km付近のエイドステーションに1時間7分で到着、コーラをもらってすぐに出発しました。
コーラを片手に走りながら、残り6km走り続けることができれば2時間を切れるくらいかな、なんて考えていると、丸木に板を渡した橋が現れました。
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この橋を越えると、序盤と同じズルズルトレイルに戻ります。
ズルズルトレイルは相変わらずの走りにくさです。
苦しむランナーを見かねた土地の所有者が、ご自身の作業小屋の敷地を通らせてくれもしました。
ご親切な方で、とてもありがたかったです。

ズルズルトレイルを抜けてたどり着いた2度目のサンドスキー場では、かなりの激登りが待っていました。
しかし、私は激坂激登りが大好き系の変態トレイルランナーであるため、ここに来てスイッチが入ってしまいました。
スタートの2時間半前まで寝ていたせいか、身体になんだかフワフワした感覚が残っていましたが、この登りで完全に覚醒しました。
あと5kmもないところでスイッチが入ったところで今さら感は半端ないのですが、せっかくだから出せる力を出して走りきりたいものです。

スイッチが入った後は、サンドスキー場跡からの景色を楽しんで、繋ぎのロードの住宅街で声援をもらって、どんどん気持ちが盛り上がって来ました。
しかし、盛り上がりすぎたせいか、最後の山を登りきったところでプチロストしてしまいます。
スタッフが誘導していたポイントを過ぎて気が抜けたところ、小さな社の境内になぜか踏み込んでしまったのです。
コースにはすぐに引き返すことができたので、タイムロスは2分もしていないと思います。
ただ、戻った場所から見ても、なんで自分が社の方に行ってしまったのか、さっぱりわかりませんでした。
コースの山道ははっきりとしていて、見誤る要素は全くなかったのですが、私は迷わず社に向かってしまっていました。
いわゆる神隠しには、こうした、理由のないように見える道迷いも含まれているのかもしれません。
私は隠されずに差し戻されて事なきを得ましたが、調子のよいときや気分が乗っているときこそ用心しないといけないなと、改めて思います。

プチロストから復帰して最後の山道を下り、漁港を通りすぎると、最後の砂浜を走ります。
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先ほどまでは曇天だったのが、ここに来て晴れてきました。
冬の晴れた海はきれいな青をしています。
サーファーも家族連れも、そしてトレイルランナーも、この景色の中で同じ時を過ごしています。
レース中なのに心が穏やかになってゆきます。

この砂浜にはおんじゅくオーシャントレイル名物の渡渉地点がありますが、土嚢でしっかり整備されてました。
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過去の出走者のレポートでは、バシャバシャ水に踏み込んで渡るというものが多かったので、内心、マジかよちょっと嫌だな、と思っていました。
でも、今回は土嚢があって、しかも引き潮も幸いしたのか、足を濡らさずに渡ることができました。
この砂浜を走り終えると、フィニッシュまではあと少しです。
時計を確認すると、1時間50分が切れるかどうかが微妙なところでした。
せっかくだから狙ってみるかと、最後の数百メートルは追い込みましたが、7秒及ばず、1時間50分7秒でフィニッシュしました。
是枝監督風に言えば、ちょっとだけ間に合わない、のパターンです。
あのプチロストがなければなとは思いましたが、目標は達成しているので充分です。
あれは社の神様にお呼ばれした時間だと思えば、むしろありがたいくらいです。
ズルズルトレイルにもなんとか耐え抜いたフリューイッドフレックス2、このレースで予定通り引退しました。
長い間ありがとうございました。

表彰式や鏑木さんとのじゃんけん大会を終えてから、また海を見にきました。
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冬の晴れた海ってこんなにきれいなんだなと、純粋に感動してしまいます。
白砂青海とか白砂青洋とか、そんな言葉はないはずですが、無理にでもひねり出したくなります。
少しずつ心が穏やかになってゆくのがわかり、とても心地よかったです。
やっぱり海っていいなあ。
なんて、山を走りに来たはずなのに。
でも、次の御宿はおんじゅくオーシャンスイムかも…。