竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主でしたが、2018年4月以降、骨折治療のためトレランは控えています。藤沢周平が好きです。

止まらない想いーcoast to coast 2017レポート3

~coast to coast~房総半島横断2017のレポート第3段です。
スタートから3時間10分ほどで、約24km地点のA2金山ダムにたどり着きました。
コースの3分の1くらいを通過してきたことになります。

A1をほぼスルーした私ですが、このA2ではしっかりと補給しました。
ただ、依然として食欲が強くなく、固形食は軽めにしか食べられませんでした。
A2には数分歩いてクールダウンしてからエイドインしたのですが、いつもはさあ食うぞ!みたいな気持ちになるのに、今回はなれませんでした。
それでも心身ともに問題はなかったので、長逗留せずに出発しました。
A2直後のトンネルを抜けた先にいた白山羊先生。
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洗剤のCMに出られそうな、輝く白さです。
洗ったばっかりなのかな。
次のA3までの13km、ロードと未舗装林道が交互に現れました。
山道も少しはあったように思いますが、それがA2-3間か、A3-4間か、記憶が曖昧です。
走ってばっかりだったので、場所の印象が強く残りませんでした。

これも場所が定かでないのですが、ロード沿いの私設エイドで地元鴨川産のミカンをいただきました。
とても美味しゅうございました。
館山若潮マラソン2015でも、私設エイドでいただいたミカンがとても美味しかった記憶があります。
千葉のミカンは若干酸味強めでパンチが効いてる印象があり、走りながら食べるのに適している気がします。
美味しいですよ。
それにしても、味の記憶は鮮明なのに、どこで食べたんだ?
ロードや林道ばかりだと場所の印象が残りにくいのかもしれません。
それか、ずっと走っているので、そのことに集中力が割かれているのかもしれません。
写真撮ればよかったかな。

ただ、こういうコースは景色が変わらずにつまらないでしょ、世間にはそう思っている方も多いと思いますが、景色は進めばそれなりに変化していくもので、そのそれなりはそれなりに面白いものです。
このレースのコースも、山間の棚田のような地域、ライフル射撃場の隣、清掃工場の脇、などなど、ロードとはいえ、景色が多様性に富んでいてなかなか飽きることがありません。
私は、走り続けるとか歩き続けるとか、同じ動作を長時間続けると飽きてしまうのですが、この日は飽きた感じにはなりませんでした。
レースでロードを走っているという感覚よりも、社会科見学をしているような感覚でした。
走れるコースなので走り続けてはいるものの、見るものが新鮮で、なかなか飽きませんでした。

このレースのコースは大体、ロードを登り続けると未舗装林道に行き当たるような設計になっています。
この林道もまた表情が豊かでした。
中でも、ちょっと今までにみたことがないなと思ったのが、この写真のエリアです。
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岩盤を切り通したのか、崖を固めて一枚岩に見えるように加工したのか、定かではありません。
どちらにせよ人間のやったことであるのは確かですが、見たことのない景色を見ると、やはり楽しくなってしまいます。
そして、時折視界が開けると南房総の風景が。
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風は強いものの、穏やかに明るい日でした。

走れるところは走り続けて、たまに歩いてを繰り返して、A3には10:50頃に到着、A2からは1時間40分ほどで着いてしまいました。
2時間かかることを想定していたので、少々余裕ができました。
トイレに行ってから、軽くバナナとコーラを摂取します。
エイドのトイレはどこも一基しかなく、それなりに待ちました。
ランネットの大会レポでも指摘されている通り、もう一基だけでもぜひよろしくお願いいたします。
A3は35,6km地点、単純計算で半分以上を通過してきています。
ここまで5時間かかっていませんが、ここからも頑張れば、日の入り前どころか10時間を切ってフィニッシュできそうです。
ネガティブスプリットもぎりぎり必要なく、この調子で行ければなんとかなりそうです。
たまには希望を持ってみようかな。
コーラを飲みながら歩いてエイドアウトします。

次のA4までは14.5kmとのこと、そして到着すれば49.5km地点になるはずです。
いずれにせよ、距離が長いのでタフな区間になるだろうなと思っていました。
しかし、距離は長いものの、やはり走れてしまうコースが続きます。
木漏れ日の林道は気持ちがよかったです。
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この直後に、楓の木と何かの柑橘類の木が並んでいる場所がありました。
楓の終わりかけた紅葉と、柑橘類の緑の葉とが、凄まじいコントラストを描いていました。
赤から黒へ変わる途中の濃い赤と、太陽の光をギラギラと照り返す黒光りした濃い緑。
それが隣り合っていることに、ある種のえげつなさを感じました。
しかし、写真を撮ろうかなと思いつつもなぜか脚は前に進み続けてしまい、結局、カメラで記録することはできませんでした。
こうなると、走れる、とか、走りやすい、というものも味気ないように思いますが、鮮烈に記憶できているということだけでも十分なのかもしれません。
南房総の山は色彩がおかしいです。
コントラストが強烈でした。
その林道を下り切ると、紅葉の隣に水仙が植わっていました。
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水仙と紅葉が共存してしまうところに常春の国千葉県の面目躍如を感じますが、いわゆる南国では珍しくないことなのかもしれません。
ただ、他にもあることだからといって価値がないわけではなく、その場の美しさに感じ入ればそれだけでよいのだと思います。
個々の経験を無理に権威付ける必要はありません。

少し唐突かもしれませんが、私なりのトレイルランニングの定義を書き留めておきたいと思います。
トレイルランニングとは、山を自分の脚だけで移動する行程、と私は定義しています。
その行程は「走る」「歩く」「止まる」の3つの要素で構成されます。
ロードのランニングには「歩く」と「止まる」がなく、いわゆるハイキングには「走る」がない。
3つの要素をを無理なく組み合わせながら進んで行くのがトレイルランニングであり、その組み合わせの創意工夫に楽しみがあると思っています。

しかし、今回のcoast to coastには「走る」しか選択肢がなくなることもあるのだなということを感じました。
正確に言えば、このレースでは「止まる」のと「歩く」のとが、選びにくいコース設計になっていたと思います。
「止まる」は、きつくなった局面で立ち止まってマッサージしたり、リュックをおろして座ったり、飲食したり、もちろんエイドでの休息も含めます。
今回はレース中にエイド以外で止まることはありませんでした。
止まらなければならないようなきつい場所がないため、どうしても止まれないのです。
「歩く」に関しても、ロードの登りや未舗装林道などは、よほどのことがない限り「走らなくてはならない」気持ちになりました。
一つ一つの登りは、傾斜がきつくなくて距離も長くないことは、高低図を見れば予想がついてしまいます。
これくらいならば走り切れるだろ?
ついついそう思ってしまって、歩くことにある種の罪悪感を覚えてしまうのです。
それなので、普段は歩くような登りも、今回はなるべく走るようにしました。
かといって走り続けるのもしんどいので、歩くための基準を設けました。
A3の手前から、登りを長く走っていると、ふくらはぎがつりそうになってくる感覚が出るようになりました。
さすがにつってまでは走りたくはありません。ふくらはぎの張りを感じたら早歩きに切り替えて、解消したらまた走り出す、そのサイクルを繰り返すことにしました。
ヤマケンさんがよく言っていた「身体の声を聞く」っていうのは、たぶんこういうことを言うんでしょうね。
ただ、ちょっとは止まろうよ、という心の声は、このくらいじゃ止まらないよ、という身体の声にかき消され続けました。
この日の身体の声には、若干強迫的ではありましたが、止まらない、長く走る、早く歩く、ことへの執念を感じました。

A3から2時間ほど走って、下り切ったロードから右に折れたところで、右上の林の中からガサガサ音が聞こえてきました。
見上げると鹿でした。
この日は狩の鉄砲の音がたくさん聞こえていたので、この鹿も落ち着くことができなかったのかもしれません。
なんてことを考えていたらA4に到着しました。
12:50頃のことでした。
A3からの14kmを2時間で通過し、A2から数えれば28kmの道のりを3時間30分ほどでまとめることができました。
私にしては上出来です。
止まらない想いの効用はタイムに現れます。
でも、エイドでは止まるもんね。
久々の休息です。