竹仙坊日月抄

トレイルランニング中心の山行記やレース記、その他雑感が主です。藤沢周平が好きです。

転倒考

転倒考、というよりも、私のこけパターンとか思い出に残る転倒というくらいの話なのですが、関連して石川弘樹さんの言葉を思い出しました。

高尾山天狗トレイル2017で転倒して打撲した左膝は、膝に溜まった血を抜いて、痛みがひくのを待ちながら養生しています。
養生といっても、走らない、階段を下らない、お酒を飲まない、だけで、特別なことはやってません。
今日になって、だいぶ痛みもひいてきました。
回復基調ですが、まだ時間が必要そうです。

実は、トレラン中の転倒でこんなに大事になったのは初めてのことで、だいぶへこんでおります。
レース中に転倒することはあまりないのですが、転倒未満の、足を木の根や石に引っかけてつまづくことはよくあります。
それが理由になるかはわかりませんが、私は足が大きく、トレランシューズでは28.5〜29cmくらいがちょうどいいサイズです。
靴が長いので引っかけやすい、と思っています。
あとは走り方にもよるのでしょうが、オールスポーツなどの写真で見ると、脚の上がりが他のランナーに比べて小さいような気がします。
そのため、フラットなロードを走っているだけでも爪先を擦ってしまうことがあるのですが、トレイルだと余計つまづきやすいのだと思っています。
走り方を変えるのはけっこう大変な作業で、足の大きさに至っては変えられません。
大変なことには着手しづらいのが本音なもので、しばらくはつまづくことを前提に、転倒に至らないような身体の使い方をするしかないのかなと、若干あきらめています。

これまでのレース中の転倒で、一番印象に残っているのが、2015年の戸隠トレイルランレース45kmカテゴリーでの大転倒です。
レース前半ハイライト、飯縄山南参道の急な山道を、スピードに乗って下っているときのことでした。
このときは雨上がりだったため山道がスリッピーでした。
山道の途中に大きな段差があったので、飛びおりるために踏み切るつもりで着地した右足が滑って、身体全体が前に流れてしまいました。
そこに運悪く、Ωのような形で木の根が山道に飛び出ていました。
流れた右足のすねが木の根に引っかかり、斜面が急だった分、宙返りをするように山道に落ちました。
落ちて見回すと、周囲のトレイルランナーの動きが止まっていました。
こけっぷりが派手すぎてドン引きしていたのだと思います。
しかし、派手なこけっぷりだったのにもかかわらず、このときはぶつけたすねにすり傷ができたくらいで済みました。
落ちた先にケガをするような危険なものがなかったのは、運のよさなのでしょう。
まあ、木の根があったのは運の悪さなので、相殺でしかないのですが。

なんだかんだいって、転倒してもケガさえしなければ、何も問題はないのだと思います。
ただ、転倒すること自体がケガのリスクであるため、できることなら転倒しない方がよいのは自明のことです。
転倒を防ぐためには、スピードを抑えて、つまづいてもこけないで済むようなスピードで走るのが、簡単な対策でしょう。
しかし、トレイルランニングというスポーツの楽しみから、スピード感や疾走感を切り離すことはできないと思います。
ジレンマです。
ケガを避けるためにスピードを犠牲にするか、スピードを楽しむためにケガのリスクを背負うか。
ジレンマの間のギリギリを追い求めるしかないのだろうということは承知なのですが。
ひとつ、答えになりそうな言葉を、石川弘樹さんから聞いたことがあるのを思い出しました。
2014年の上越国際のレースで、前日のレセプションで石川さんが、ご自身のある種の美学として語られていました。
それは「トレイルに行っても汚れないで帰ってくる」ということ。
聞いたときは、明日はこけんなよ!ってことなのだと思いましたが、石川さんくらいのトップランナーでも、こけないで帰ってくることを目標にしているということが新鮮でした。
そして、石川さんクラスのスピードを持つランナーが目指すことならば、市民ランナーの私が目指せないことではないのだとも思います。
石川さんのスピードは私にはもちろんなく、私のスピードで私自身がこけないように身体を制御することは、石川さんがご自身のスピードでこけないようにすることよりも、はるかに容易でしょう。
できないことはないのだったら、心がけてもいいのではないかと、痛む膝を見ながら思いました。
でも、こけるのもトレイルランニングの楽しみのうちではありますが…。
ケガなく楽しみたいものです。